昭和後期こどもの歴史研究会

平成時代の社会変化で、その直前の昭和後期こどもの歴史は忘れられています。お金にならないため、企業も投資したがりません。人間の幸福感の問題として、昭和後期のこどもの文化を、現在のこどもたちに伝えていく努力をしたいです。昭和後期のこどもの文化に幸福を感じる現在のこどもを、一人でも育てられたら嬉しいです。

北村充史『テレビは日本人を「バカ」にしたか?-大宅壮一と「一億総白痴化」の時代-』平凡社、2007年を読んで

民間テレビが、娯楽番組でやらせを行うのは、「電波少年」に始まることではないようです。

1956年11月3日、日本テレビ早慶戦の早稲田側応援席にスタッフを潜入させ、慶応の応援をさせてみたのが、その端緒だったようです。

すぐさま、評論家の大宅壮一さん(1900~1970)が反応し、「テレビは日本人を馬鹿にする」という論陣を張ったそうです。

中部日本放送社員・永田:「日本でも今は、教養番組では金にならない。そこで教養番組は辺鄙な時間に片付けられて、白痴化の番組だけが威張って出ているわけです。こういう時こそ、NHKを大きく育てて行かなければならないと思うのですが。」

大宅:「ところが、そのNHKが、白痴化競争に乗り出して来るんだね。」

作家の松本清張さんも、同様の論調を張っています。

1981年、私の1個下の後輩が、「♪ギンギラギンにさりげなく…」と口ずさんでいました。

「何、その歌?」と聞いたら、後輩は「先輩が知らない歌ですよ」と答えました。

「テレビ番組は、今くらいがちょうどいい」「今までみたいなテレビ番組では、夜の放送は12時で終了」とも言っていました。

テレビの娯楽番組を見ていると、仲のいい同世代の友達の顔が浮かぶのですよね。

1981年に、フジテレビが娯楽路線に舵を切り、1989年にNHKが娯楽路線に舵を切るまで、80年代一杯を掛けてテレビ番組の娯楽化は進行します。

NHK教育テレビ「You」は、高校の文化祭をモデルにしたと言われます。

そうしてテレビ番組の娯楽化は、キラキラネームの普及と軌を一にしています。

生まれた赤ん坊にキラキラネームを付ける時は、恐らく同時期に親になった、仲のいい同世代の友達の顔が浮かぶのではないでしょうか。

日本人の白痴化の進行には、「仲のいい同世代の友達」という要素が付いて回ります。

一方で、「テレビは日本人を馬鹿にした」と断定する人は、活字で育った世代の知識人に多いそうです。

大宅さん自身も、70歳で亡くなっています。

人生70年の時代です。

しかし、活字で育った世代が日本社会の主流であった頃は、「今までにはいなかったような犯罪者が跋扈している」ような心配もなかったのではないでしょうか。